膝内側の痛みの原因とは?

スポーツをおこなっている人、そうでない人に問わず膝の痛みを訴える方は年々増加傾向にあります。これは高齢化社会による影響も一つと考えられていますが、それ以外の要因も様々あります。膝の痛みを訴える方々は膝の内側の痛みを訴える方のほうが割合としては多いです。では膝内側の痛みを訴える疾患、原因について説明していきたいと思います。

変形性膝関節症

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)はいわゆる「老化による膝痛」です。膝内側の痛みを訴える方々で40代以降の割合としては「変形性膝関節症」と診断される方がとても多いです。
変形性膝関節症は膝関節を形成する骨の軟骨が老化に伴って水分量が減り、関節の間が狭まってぶつかり合うことですり減り、すり減った軟骨粒子が関節内に飛び散り、関節を包む袋(滑膜)にぶつかることで関節に腫れが起き、痛み、熱感などを伴う疾患です。

症状は初期は座った状態から立つと痛む。寝ていた状態から起き上がるのが痛いが動かしていると徐々に痛みは減ってくるという症状からはじまります。

やがて階段の昇降時に痛みを訴えるようになり、痛い方の足を後ろにして階段を降りるのが困難になってきます。徐々に可動域制限も出てきて、正座ができない状態から進行すると90度より曲げられなくなってしまうこともあります。

軟骨がすり減って、骨同士がぶつかり合うようになると骨には痛みを感じる痛覚という受容器がたくさんあるため歩くたびに激痛を訴えるようになります。この状態までいくと思うように生活できなくなるため人工関節置換術などの手術療法を選択する方もいらっしゃいます。

変形性膝関節症は増加傾向にある疾患であり、現在700万~1000万人の罹患者がいると言われています。現在痛みは出ていないが、Ⅹ線などに関節の狭まりなどの異常がみられる方々を変形性膝関節症の予備軍と言われています。この方々を含めると2400万人と言われています。

2400万人という数を聞いてお解かりの通り、かなりの割合で軟骨のすり減りなどの変形性膝関節症と疑われる画像上の異常がみられることがあります。しかし、私の経験上、画像で変形性膝関節症の疑いがあっても膝内側の痛みそのものは変形性膝関節症が原因でない場合も多いです。
単純に考えると変形性膝関節症の画像所見なのにもかかわらず痛みがない方が1400万人いるということです。

そのため、40代以降の方が膝内側の痛みがあり、整形外科に行き、関節の狭小がみられると変形性膝関節症と診断されることがありますが、膝内側の痛みそのものは変形性膝関節症の痛みでない可能性もあることを頭に入れておきましょう。

膝内側の痛みが変形性膝関節症である可能性が高い症状として
・膝関節内の腫れがあるため、曲げるとお皿の上あたりがつっぱって曲げられない。
・初期は動作開始時痛があり、徐々に階段の昇り降りが辛くなってきた。
・O脚気味である。
・膝の痛みの発症が明らかでない。(徐々に痛みが強くなってきた感じ)
などの症状がある場合は変形性膝関節症の痛みである可能性が高いです。
詳しくは変形性膝関節症の治療をご覧ください。

鵞足炎(がそくえん)

鵞足炎(がそくえん)も膝内側の痛みを訴える方で多い疾患の一つです。特にスポーツをしている人で膝内側に痛みを訴える場合、鵞足炎である可能性が高いです。

鵞足炎(がそくえん)とは太ももの前、内側、後ろから膝の内側を通りスネの骨(脛骨)にくっつく3つの筋肉が膝の曲げ伸ばしによって摩擦され痛みを起こす疾患です。3つの筋肉とは縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はっきん)、半腱様筋(はんけんようきん)です。この3つの筋肉は膝内側を通る際に筋肉から腱と呼ばれる組織になります。3つの筋肉が疲労を起こして硬くなったり、下肢のゆがみがあり筋肉に余分な負荷がかかり、3つの筋肉が硬くなっていると、膝内側の腱の部分を引っ張った状態になり、膝の内側の骨(大腿骨内側上顆や脛骨内側顆)と摩擦を起こしやすくなります。

症状は、運動時の痛みを訴える人が多いです。走っていて初めは良いが徐々に膝内側が痛くなってくる。走り続けていると走ることが困難なほど痛くなってしまうという方もいます。

運動をしている人に多いが運動をしていない人にも鵞足炎になる可能性もある

鵞足炎は運動をしている方に圧倒的に多い疾患ですが、運動をしていない方でも起こります。それは、足のゆがみがかなり強い方です。足根骨のゆがみ、膝関節、股関節の捻じれが強い方は鵞足炎に関係する3つの筋肉が緊張しやすく、やがて膝内側に痛みを訴える可能性があります。運動をしていないからといって鵞足炎でないと判断はしないほうが良いでしょう。

鵞足炎が膝内側の痛みの原因であっても変形性膝関節症と診断されることが多い

膝内側の根本原因が鵞足炎であっても整形外科での診断は「変形性膝関節症」と診断されてしまう方が多くいらっしゃいます。それは上記でも説明したように膝関節のX線を取ると40代以降であれば半数の方が関節の狭小などの異常がみられます。
膝内側に痛みがある+画像上関節の狭小がある場合はかなりの確率で変形性膝関節症と診断されることが多いです。しかし、上記でも説明したように、関節の狭小が画像上みられても痛みを感じていない方が1400万人います。仮にこと方々が鵞足炎による膝内側の痛みを訴えたとしてもX線検査をした段階で「変形性膝関節症」と診断されてしまう可能性は高いです。

実は鵞足炎と変形性膝関節症の見分けるのは難しい部分があります。もちろん関節内に顕著な腫れなどがあるようでしたら変形性膝関節症で良いのですが、変形性膝関節症も鵞足炎も下肢のゆがみが関連しているので両方の疾患を併発している方も多くいらっしゃいます。
そのため、どちらの痛みが根本原因かと判断するのが難しい場合もありますが、治療に関しては併発していても両方同時にアプローチしていけば何ら問題はありません。

変形性膝関節症の場合、ある程度痛みを訴えてから時間が経過していると関節内の腫れがあるため関節を曲げることができません。(正座や屈伸が困難になる)
一方、鵞足炎の場合、膝関節内に腫れが起きることはないため、関節可動域制限は起きません。正座や屈伸で多少痛みが出ることはありますが、極端に膝関節がつっぱって曲げられないという症状は起きません。

詳しくは鵞足炎の治療についてご覧ください。

内側半月板損傷

内側半月板とは膝関節の間に衝撃を和らげるクッションのような軟骨を半月板と言います。内側にある半月板を内側半月、外側にある半月板を外側半月と言います。内側半月を傷めると膝内側に痛みを訴えることがあります。
内側半月を傷めるスポーツとしてサッカーや野球、ゴルフ、ラグビーなどがあげられますが、厳しい練習環境の元おこなっているスポーツ選手は半月板損傷を起こすリスクはほとんどの競技であると言われます。
膝関節に強い回旋力のかかる動き(バットスイング、ゴルフスイングなど)、サッカーやラグビーなど足を使って急激に切り返す動きの際に膝にかかる捻じれの動き、バレーボールやバスケットなどのジャンプからの着地など様々な動きで半月板にかかる負荷があり、その際に半月板に亀裂が起きたりささくれになったりします。

半月板自体に痛みの痛覚はわずかにしかないのですが、半月板を傷めることにより膝関節周辺のバランスが悪くなり、膝に痛みを訴えるようになります。

半月板損傷による膝内側の痛み改善するのに時間がかかることもあり、手術をおこなう方も多くいらっしゃいます。

半月板損傷はスポーツをやっている方に多くみられますが、スポーツをおこなっていない高齢者にも起こることがあります。半月板は年齢とともに水分量が減り、パサパサした状態になるため、変性、亀裂も起きやすく、半月板損傷になることもあります。

症状は膝内側の痛み、膝が抜けるような感じ、急に膝の曲げ伸ばしができなくなってしまうロッキング症状を起こしたりします。

半月板損傷の痛みである場合、画像診断としてはMRI検査が必要になります。上記でも説明したように半月板自体には痛みを感じる痛覚は少なく、半月板が損傷することで周りの軟部組織などのバランスが崩れて痛みを訴えることが多いです。損傷した際に半月板の位置がズレてそれが原因で膝関節のバランスが崩れて痛みを起こすこともあります。
内側半月板損傷の場合、半月板の位置を正し、下肢全体のゆがみを整えバランスを取り戻すことで痛みの改善につながることも多くあります。

タナ障害

タナ障害とは滑膜ひだ障害とも呼ばれ膝蓋内側滑膜ひだ(しつがいないそくかつまくひだ)という部分が肥厚することによって膝内側に痛みやひっかかり感を感じるようになります。膝蓋内側滑膜ひだ(しつがいないそくかつまくひだ)は母親のお腹の中にいる胎児の時に一時期的に存在するもので発達の過程でなくなっていくため半数の方は生まれつき持っていません。なくてよい組織なのですが、半数の方は残ったままになり、この部分が肥厚することで膝内側の痛みを訴えるようになります。

膝蓋内側滑膜ひだがある方がタナ障害に全員なるかというとそうではありません。タナ障害も膝関節の捻じれや周りの組織のバランスが悪くなることで膝蓋内側滑膜ひだに炎症が起こるためねじれの矯正や膝関節周りの組織のバランスを良くすることで痛みの改善は望める疾患です。

内側側副靭帯損傷

内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)とは硬いゴムバンドのようなもので、膝の関節が外れないように内側をしっかりと支えている靭帯を言います。

内側側副靭帯は強靭な組織のため、運動を繰り返すことや老化によって痛みを起こすことはありません。多くの場合は外的衝撃を受けた際に損傷、部分断裂、完全断裂を起こし痛みを引き起こします。
交通事故、ラグビー、アメリカンフットボール、柔道など相手とコンタクトし、倒れた際に相手が自分の体に乗っかり、膝内側に牽引力がかかると内側側副靭帯を傷めることがあります。

膝内側を痛みの原因はどこを痛めたが原因ではなくどのように動いているかが本当の原因

上記で説明したように膝の内側の痛みを訴える疾患は整形外科上様々あります。しかし、実はどの部位を痛めているかということが重要なことではなく、膝の内側の組織を痛めてしまう悪い動きがなんなのかを見極めることが重要なのです。

膝の内側を痛める悪い動きをしてしまっている原因を突き詰めることが一番重要なのです。

骨のゆがみが原因で膝内側に負担がかかってしまう動きになってしまう


例えば、鵞足炎に関してですが、踵(踵骨)が回内足の影響でスネの骨(脛骨が)外側に捻じれ、太ももの骨(大腿骨)が内側に捻じれるようなゆがみが生じでると、膝の内側の鵞足部にもねじれによる牽引力がかかり痛みを引き起こすようになります。

このように骨のゆがみが原因で筋肉に牽引力がかかり膝内側に負担のかかる動きになってしまうことがあります。


体の使い方により膝内側に負担をかけてしまう。

スポーツをする際にO脚、ガニ股癖のある方は膝が外側に開く動きになりやすいです。この動きでスポーツを続けると膝の内側で太ももの骨(大腿骨)とスネの骨(脛骨は)がぶつかり合うような形になるため、内側の半月板や関節軟骨に負担がかかるようになります。外側は牽引力がかかり腸脛靱帯や外側側副靭帯に牽引痛が起こることがあります。

スポーツをする際にⅩ脚、内股癖のある方は膝が内側に入った動きになりやすいです。膝が内側に入った動きでスポーツを続けると、膝の内側に伸ばされる圧がかかります。鵞足や関節包、内側側副靭帯に張力が繰り返すかかることでそれらの軟部組織に痛みを訴えることがあります。外側は圧力がかかるため、外側半月板や関節軟骨を痛めやすくなります。



このように歩く、走る癖で膝内側の組織に負担をかけてしまうことがあります。もう一度ご自分の体の使い方をビデオなどを撮り確認してみるのも良いでしょう。

私が推奨する歩き方・走り方は足裏全体で着地し、母指球で蹴らず中指から抜けるように歩く・走ることです。この歩き方、走り方は足の構造上負担も少なく、昔の飛脚と同じ足の使い方と言われています。現在膝内側に痛みを感じている方はこの歩きかた、走り方を意識するだけでも痛みの度合いが変わってくる可能性があります。

不良姿勢による体の連動性の欠如による膝内側の痛み

スマートフォン、パソコン、ポータブルゲームの普及により下向き姿勢をとる方が若者から中年まで幅広くいらっしゃいます。
下向き姿勢は猫背を誘発し、猫背になることで骨盤が後傾してきます。骨盤が後傾すると、上半身と下半身の連動した動きが制御され下肢のみを使った動きになりがちです。
連動性の欠けた体は疲労が溜まりやすく、柔軟性も欠如することから、膝内側の軟部組織にも負担を欠け膝内側の痛みを訴えるようになります。

膝内側の痛みの原因はどこの部位を痛めたかを断定するよりも、今現在の生活で膝内側に負担のかかる生活、動きをしていないかを再確認し、もしそのような生活、動きをしているならまずはそれから改善するのが根本治療につながるでしょう。

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