なかなか治らない鵞足炎(がそくえん)は原因が別にある？
スポーツをしている方に多く見受けられる膝の痛みです。鵞足炎は膝の内側が痛くなる疾患で、膝の外側やお皿(膝蓋骨)が痛むということはありません。５０代以降の膝内側の痛みは鵞足炎よりも変形性膝関節症と診断される方が多く見受けられます。
整形外科で鵞足炎と診断されるのはⅩ線(レントゲン)検査を行い、骨に異常がなく、主な外傷性の要因(転んだり、ぶつけたりしていない)がなく、膝の内側に痛みを訴える場合、「鵞足炎(がそくえん)」と診断されます。膝の内側の痛みは鵞足炎(がそくえん)以外にも様々あるためＭＲＩ画像を撮り、細かく炎症所見や病巣部位を判断する場合もありますが、全ての整形外科にＭＲＩ検査機があるわけではないので、多くの整形外科ではＸ線検査の画像をみて骨に異常がなければ「鵞足炎」と診断されることが多いです。
鵞足炎と診断され、鵞足炎に対する治療やストレッチなどのセルフケアをしたけど痛みがなかなか治らない。数週間安静にしていたがスポーツに復帰してみたら膝の内側が痛むなど鵞足炎に対する治療をしてもなかなか痛みが改善したいケースもあります。
この場合の原因は２パターン考えられます。
１つは鵞足炎に対するアプローチが間違っていること。鵞足炎は「炎」という字がついているので鵞足の炎症を取れば良いと考え、アイシングやシップなどを一生懸命おこなう方がいます。しかし、炎症が悪いわけではなく炎症が起きてしまう原因を取り除かなければいけません。鵞足炎になってしまう原因は何らかの原因で鵞足を構成する縫工筋、薄筋、半腱様筋が筋緊張を起こし膝内側部で摩擦を起こすからだと言われています。この筋緊張を取り除かなければいくら炎症をおさめる行為をしても痛みの根本改善にはなりません。
もう１つのパターンは鵞足炎ともうひとつ別の疾患が併発しているケース。膝内側の痛みの原因が鵞足炎ではなくその他の疾患であったケースです。鵞足炎と併発している場合も鵞足炎は改善したものの他の疾患が残っているので痛みは引き続きおこります。
鵞足炎ではなくその他の疾患が膝の痛みを訴えていた場合、いくら鵞足炎の治療をおこなっても改善は難しいでしょう。
では鵞足炎と間違えられやすい膝内側の痛みとは何が原因なのでしょうか？
鵞足炎と診断され、なかなか改善しない場合、脂肪体による痛みである可能性が考えられる
なかなか改善しない膝内側の痛みの原因は鵞足炎が痛みの根本原因ではなく膝の脂肪体という組織の動きが悪くなって引き起こしている可能性があります。脂肪体とは膝の中にある組織で膝のクッションをしている組織です。「脂肪体」と聞くと脂肪だから太っている人にある組織？と考える方もいますが痩せている方にも必ずある組織です。膝の脂肪体は今まであまり膝の痛みの原因としてとりあげられる組織ではなかったのですが、痛みを感じる受容器がとても多く、脂肪体が膝の曲げ伸ばしの際にスムーズに移動しないと膝の痛みの原因になることが最近の医学でわかってきました。。
実は膝の痛みの原因が脂肪体であるケースがとても多いのです。
鵞足炎と脂肪体ともに軟部組織であるためＸ線(レントゲン)の検査ではどちらの痛みであるかを判断することはできません。
脂肪体が原因の痛みであるかどうかを判断するには膝を伸ばした状態でお皿の内下方を押してみて圧痛があるかどうかを調べる。痛みがあるが、膝を曲げて同じ部位を押しても痛みが出ない場合は脂肪体が原因で痛みを起こしている可能性があります。脂肪体は膝を伸ばすと膝関節の表面側に移動し、曲げると関節の中へ移動します。そのため伸ばした状態だと圧痛がでますが、曲げた状態だと圧痛はでません。ご自分でも行なえる検査なのでためしてください。ただし、押す部位が間違っていると脂肪体の痛みであるかどうかの判断ができないので押す位置が分からない場合は、医療機関に相談することをお勧めいたします。なかなか治らない鵞足炎の原因が脂肪体が原因の膝内側の痛みである可能性が考えられます。この場合、脂肪体の動きを良くする調整をすると膝内側の痛みは改善します。現在鵞足炎と診断され、なかなか治らない方は一度脂肪体による膝の痛みを考慮し、治療やセルフケアをおこなってみると良いでしょう。