変形性膝関節症の痛みとレントゲンの画像診断は一致する?
変形性膝関節症と診断されるのは整形外科に行きレントゲン写真を撮ると診断がくだります。医師からは「高齢により軟骨がすり減って膝が痛む」と伝えられます。ただし軟骨のすり減り具合も人それぞれ違います。軟骨がまだそこまですり減っていない人から軟骨が全てすり減って骨同士がぶつかりあうようになってしまう方まで様々です。
では変形性膝関節症の痛みとレントゲンの画像診断は一致するのでしょうか?
軟骨がすり減ったからといって痛みが出ないこともある。
変形性膝関節症のレントゲンによる画像診断は大きく分けて6つのグレードに分けられます。グレードは関節の隙間がどれくらい狭まっているかによって診断されます。グレード0はレントゲン上は正常です。レントゲンでは異常はありませんが、年齢や症状などから変形性膝関節症と診断されることもあります。グレード0の段階では医師により見解も違うためレントゲン上正常であれば変形性膝関節症ではなくその他の疾患(半月板損傷や鵞足炎)などと診断されることが多いです。
グレード1は骨棘(こつきょく)という骨のトゲがレントゲン上に見受けられます。しかし、関節の隙間は狭まることなく正常である場合に変形性膝関節症と診断されます。素人が「骨にトゲができている」と言われてしまうと非常に痛そうなイメージや治らないのではと考えがちですが、骨棘があると必ず痛みが伴うわけではありません。骨棘があっても膝に痛みを感じていない人はとても多くいらっしゃいます。骨棘ができていても関節の隙間は狭まっていないのでまだこの段階では軟骨はあまりすり減っていません。
グレード2は軟骨がすり減り、レントゲンで関節の隙間が3ミリ未満狭まった画像になります。このグレードで「変形性膝関節症」と診断される方はとても多くなります。ただし、60歳以上になるとほとんどの方が数ミリの関節の隙間の狭小化がみられると言われており、関節の隙間が狭まっていても膝に痛みを感じていない方はとても多く見受けられます。
グレード3はレントゲンで関節の隙間は極めて狭まっており、亜脱臼を起こしていることもあります。グレード3以上になると軟骨は全てすり減っていて軟骨の下の骨同士がぶつかり合うようになります。そうなると痛みもかなり強い痛みとなり歩くだけでも激痛を訴えることがあります。レントゲン上、グレード3以上の関節の狭まりが見受けられ日常生活に支障をきたすほどの痛みであれば人工関節置換術による処置を整形外科では勧められる可能性がでてきます。
グレード4は荷重面の5ミリ未満の軟骨の摩耗と欠損、グレード5は荷重面の5ミリ以上の摩耗と欠損です。グレード4,5までくるとレントゲンを撮らなくてもO脚の度合いもかなり強く、痛みもとても激しく起こります。特に夜間痛などを訴える場合、微小骨折や骨髄圧由来の痛みである可能性があり、かなり強い痛みを訴え日常生活を送るのもとても不自由さを感じるようになります。
軟骨がすり減ることによりレントゲン写真をとると関節が狭まっている画像は素人目にもわかります。しかし軟骨がすり減っていても必ず膝に痛みを伴うわけではありません。
軟骨には神経、血管はないため痛みを感じないのです。
ではなぜ膝に痛みが起こるのでしょう?
グレード0、1,2で生じている痛みは軟骨がすり減って痛みを起こしているわけではなく、骨のゆがみなどにより膝関節が不安定な状態になりそれに起因した滑膜炎(膝関節を包む袋の炎症)や膝蓋下脂肪体が原因の痛み、膝関節周辺の筋肉や腱、靭帯の痛みなどです。
そのため、すり減った軟骨が再生しなくても滑膜炎の炎症を消炎したり、膝蓋下脂肪体の調整をしたり、筋や腱、靭帯の痛みを取り除く治療をすれば変形性膝関節症であっても痛みの改善は十分に可能です。
グレード3,4,5の痛みも軟骨が激しく摩耗したから激痛がするのではなく、軟骨がなくなってさらに骨同士がぶつかり合うようになります。骨にはたくさんの痛みを感じる神経があるため骨同士がぶつかり合うようになるととても強い痛みを感じるようになります。
実はグレード0~5全ての変形性膝関節症のグレードで軟骨がすり減って痛みを起こすことはありません。なのでいくら頑張って軟骨成分をサプリメントなどで摂取したところで変形性膝関節症の痛みが改善するわけではないのです。グレード0,1,2の状態では軟骨に負担のかかる膝の状態であることは間違いありません。足根骨のゆがみ、骨盤の歪み、血液循環不足など様々な要因がありますが、グレード0,1,2の段階で治療をし、グレード3以上に進ませないようにすることが人工関節置換術を避けるためにも非常に重要です。現在変形性膝関節症で痛みを感じている方はご自分は現在どの状況なのかを参考にしていただき、ご自分にあった治療法をおこなうことをお勧めいたします。