足首捻挫の応急処置
捻挫の応急処置=アイシングは古い!?
今までスポーツ医学会では足首を捻挫(ねんざ)したらすぐにアイシングを含んだRICE処置(圧迫・挙上・冷却・安静)が主流とされ「急性期の48時間はRICE処置」が常識でした。今現在でも、多くのスポーツ現場や整骨院などではアイシングを中心とした処置が行われることが多いのですが、実は欧米を中心に急性期にアイシングをすることで逆に回復を遅らせているという研究が多く発表されています。
最新のスポーツ医学会では急性期の捻挫(ねんざ)の応急処置はアイシングではないのです。もし、お近くの整骨院や整形外科で「急性期は冷やすように」と勧められたらそれはあまり最新の医学の勉強を怠っているのかもしれません。
アイシングの効能って何?
そもそもなぜアイシングはする必要があるのでしょうか?それは、「炎症を抑えるため」です。みなさんも痛みがある時は炎症を抑える必要があるということはどこかで聞いたことがあると思います。
炎症を最小限に抑えることで捻挫(ねんざ)は早期に回復すると考えられてきました。
しかしアイシングの重要性を1番最初に提唱した医師は当初「アイシングはアスリートにとって必須なもの」と訴えていたのに、2014年になると「アイシングは回復を助けるのではなく、遅らせるかもしれない」と訴えを全く逆に転換したのです。
アイシング創設者が「アイシングは回復を遅らせるかもしれない」と認めたのです。
なぜ「アイシングが回復を遅らせる」という見解に意見が変わったかというと、そもそも炎症反応とは体を回復する反応であり、炎症を止めてしまうと回復は必ず遅くなってしまうのです。
組織の修復には炎症が必要!?
足首を捻挫(ねんざ)をした時に関節を支える靭帯(じんたい)や関節を包む袋である関節包(かんせつほう)などの組織にダメージが起こります。ダメージを受けた靭帯(じんたい)や関節包(かんせつほう)を修復するために必要な材料があります。その必要な材料というのがIGF-1と呼ばれるホルモンです。IGF-1が痛めた組織に到着することによって組織が回復していきます。例え話にすると・・・
夢のマイホームを建てました。ある時、台風が来て屋根が飛んでしまいました!!急いで治そうと思っても自分では屋根は直せません。大工さんを呼ばなくては!!!大工さんは国道を通ってマイホームまで駆けつける予定です!
これを人間の体に置き換えると・・・
夢のマイホーム=自分の体
台風で屋根が飛んでしまった=足首を捻挫(ねんざ)した
大工さん=IGF-1細胞
大工さんが通ってくる国道=血管(血液)
ということになります。一刻も早く大工さんに来てもらうためには国道を突っ走ってきてもらう必要があります。今のたとえ話に置き換えると炎症とは屋根が飛んだ後に大工さんが来るまで駆けつけて屋根を治してくれるまでの過程を「炎症反応」と言います。
絶対に身体の組織を治すのに必要なことはお解りいただけたと思います。
アイシングはなぜ良くないの??
炎症反応が体にとって決して悪い反応ではないことは皆さん理解して頂けたと思います。ではアイシングがなぜ組織の回復を遅らせてしまうのかを説明したいと思います。アイシングをすることにより血管は収縮(縮まる)します。血管が収縮すると血液循環が悪くなるため組織の修復に必要な材料であるIGF-1細胞がなかなか届かなくなってしまいます。
アイシングを含めた話を上記のたとえ話に追加すると・・・
屋根が台風で飛んでしまったので、急いで大工さんが壊れた家へ車で向かおうとすると国道はなんと車線規制に検問と大渋滞。全然車が進まず屋根の修復作業に全然とりかかれない・・・
国道の車線規制&検問で大渋滞=アイシングにより血管収縮、IGF-1が痛めた組織へ到達しない
とこのような状態になります。
スポーツなどで捻挫(ねんざ)や打撲をした時にはアイシングをするのではなく積極的にIGF-1細胞が集まれる状態にすることが早期回復のカギとなってきます。
今まで何故アイシングが重要とされてきたのか?
今まで急性期にはアイシングが必須とされてきたのは短期的な「痛みの緩和」に優れていくことです。組織を痛め、炎症反応が起こると人間にとって「痛い」と感じるようになります。痛みは「不快」な感覚ですから一刻も早く痛みから解放されたいと考えます。しかし、上記でも述べたように痛みを伴う「炎症反応」は人間の体が回復する過程で絶対必要であり、アイシングにより痛みがその場でやわらいだとしても組織の修復は進んでおらず、動き出すと徐々に痛みを訴えたり、痛みが長く続く慢性痛にもなりかねないようになってしまいます。
足首捻挫(ねんざ)の最も良い応急処置とは?
足首捻挫(ねんざ)と言っても靭帯(じんたい)が伸びただけのものもあれば部分的に切れてしまうもの、完全に断裂してしまうものによって炎症反応も様々です。しかし共通していえるのがIGF-1細胞を痛めた組織に積極的に集めることで修復は早まります。ですから積極的に血液循環の促すようなことをするのがお勧めです。
たとえば組織を温めるというのも一つのてです。
私がおススメしているのはアイシング→足首の運動→温める→アイシング→足首の運動
という3パターンを連続して最後は温めて終わることを推奨しています。
動かすことにより足首が硬くならないことをめざしますが、痛くて動かせないため一過性にアイシングで痛みをやわれげます。その間に足首の運動→ある程度血流が良くなったところで温めます。血液循環が良くなり、組織の修復がはじまります。
このルーティーンを繰り返す応急処置が足首捻挫から早期に回復するのに最適だといえます。