サッカー選手は腸脛靱帯炎になる?

通称ランナー膝と呼ばれることからもわかるとおり腸脛靱帯炎はランナーに好発する膝外側の痛みです。サッカー選手の中にも膝外側の痛みを訴えることがあり腸脛靱帯炎であることが多いです。良く走るスポーツであるのが理由と考える方が多いと思いますが、サッカーには腸脛靱帯炎を誘発してしまう理由がいくつかあります。それを改善しないと サッカーによる腸脛靱帯炎は改善しません。ではサッカーで患う腸脛靱帯炎の理由とは何でしょうか?

捻挫の後遺症として腸脛靱帯炎になる

サッカーは足首捻挫(ねんざ)を比較的起こしやすいスポーツです。足首を内側に捻る内反捻挫をしてしまうと外くるぶしにつながる腓骨(ひこつ)という骨が下にズレてきます。この状態でサッカーを続けていると腓骨のズレが他の骨へ波及し下半身全体がゆがんだ状態になります。
下半身がゆがんでいると立っている状態でもゆがみを安定させるために筋肉が緊張します。お尻の筋肉(大殿筋)が緊張することで腸脛靱帯を引っ張る形になり腸脛靱帯炎を引き起こします。
多くの選手が、捻挫をしてもRICEの処置(圧迫、挙上、冷却、安静)をして腫れと痛みが引いたらプレーを再開します。腓骨のゆがみまで正して復帰する選手は少ないでしょう。そのため捻挫をしてから数か月~数年後に膝外側に痛みを訴える選手がいます。この場合、いくら膝外側の痛みのある部分を調整しても改善しません。プレーをするとすぐに痛みが戻ってきてしまうため下半身全体の治療が必要になります。

インサイドキックによるO脚の影響

サッカーの場合、パスを出す時など靴の内側でボールを蹴る形になります。(インサイドキック)
この蹴り方を何度もすることで下半身がO脚気味になっている選手がいます。O脚は膝の外側に牽引力がかかるため腸脛靱帯炎や外側側副靭帯を痛めやすくなり、膝外側の痛みを引き起こすことがあります。
ただし、O脚だからといってすべての人が腸脛靱帯炎になるわけではありません。O脚にプラスして他の要因が合わさったときに腸脛靱帯炎を引き起こすことが多いです。

腸脛靱帯炎と診断されても原因が違う部位にある膝外側の痛み

サッカーをしていて膝外側に痛みを訴え、整形外科を受診。骨には異常がないため「腸脛靭帯炎」と診断。腸脛靱帯炎に対しての様々な治療をしたが痛みが改善せず・・・
自分の腸脛靱帯炎は果たして本当に良くなるのだろうか・・・・?

このような不安を感じている選手がいるのではないでしょうか?臨床上このような選手に何名か出会ったことがあります。

しかし、結構すぐに良くなります。

それはなぜか?

痛みの原因が腸脛靱帯炎ではないからです。
サッカーは中学、高校、大学と徐々に年齢が高くなるにつれて試合中の「敵の当たり」も強くなってきます。そのためかなり強く相手が当たってきた際に倒れるような形になると膝が内側に入る形で倒れることがあります。その際に膝の関節内の内側は開く形になり、外側はつぶれる形になります。この際の衝撃で半月板を損傷したり、半月板の位置ズレを招くことにもなります。これがレントゲンでは写らず、骨に異常のない膝外側痛として腸脛靱帯炎と診断されてしまうことがあります。
半月板の位置の修正やその他周りの組織を修復することで膝外側の痛みが改善する可能性は十分にありますが腸脛靱帯炎だと誤診されいつまでも腸脛靱帯炎に対する治療をしていてもなかなか改善しないでしょう。

サッカー選手の場合、何が原因であるかを見極めるのが大事

サッカー選手の腸脛靱帯炎でまず重要なのが、その痛みの原因が本当に腸脛靱帯炎由来のものかどうかを判断することです。腸脛靱帯炎でもないのに腸脛靱帯炎へのアプローチをしていてもなかなか改善しないでしょう。そのため、どの部位が原因の痛みなのかをまずはしっかりと見極めるようにしましょう。しっかりと損傷部位へ対するアプローチができれば比較的早期に競技復帰することも可能でしょう。

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