腰部椎間板ヘルニア(椎間板性腰痛)
下記のMRI画像は、私の患者様から直接お借りしてきた画像です。素人目にもおわかりかと思いますが、典型的な椎間板(ついかんばん)ヘルニアを患っています。
MRIを撮った当初は右足太もも後側~ふくらはぎ、足底全体に強いシビレ、痛みがあり、歩くのも、片足を引きずってやっと歩ける程度でした。
しかし、この患者様は手術を行わず、定期的に当院の治療に通っていただいた結果、現在はシビレや痛みもなく、少し予約時間に遅れた時には、小走りでやってくるほど症状が改善しました。MRI画像上、かなり深刻なヘルニアでも、当院の治療で改善することが望めます。
椎間板ヘルニアは、鍼灸マッサージで治療が可能な場合も数多くあります。ヘルニアで腰痛や足のシビレでお困りの方、ぜひ一度、土井治療院の治療を受けてみてください。
下記に詳しく椎間板ヘルニアについての説明を書きましたが、治療法のみを知りたい方は、こちらをクリックしてください。
好発年齢
発症年齢は20代が最も多く(全体の36.5%)、30代(27%)大部分は40代(18.7%)までで、50歳以上の発症は数%に過ぎません。
スポーツをよくする10代にも多く診られます。
※50歳を過ぎてヘルニアと診断される方は、シビレなどの症状が出なくても以前にヘルニアを発症している方が多いです。
CT検査やMRIなどの画像検査では、腰部や足にまったく症状がない人でも、ヘルニアなどの異常が見つかる場合があります。
画像診断の異常=腰痛、足のシビレなどの症状が一致するとは限らないのです。
基礎知識
背骨と背骨をつなぐ部分には椎間板(ついかんばん)というクッション作用のある円盤状の軟骨があります。椎間板は中央部に髄核(ずいかく)というゼリー状のものがあり、それを囲むように硬いゴム状の繊維輪(せんいりん)と呼ばれる軟骨が包んでいます。
ゼリー状の髄核(ずいかく)は繊維輪(せんいりん)の中にすっぽりと包まれているため、外にでてしまうことはありませんが、もともと体重の負荷がかかる椎間板に、激しい運動や体重増加などによりさらに負荷が増すと、椎間板にかかる圧力が強くなり、中にある髄核は外に押しつぶされてしまいます。
その圧力で椎間板全体が横に飛び出てすぐ横を走る神経を圧迫してしまいます。この神経の圧迫により腰痛や足の痛み、シビレの原因となります。この飛び出た部分ヘルニアと呼び、腰の部分で飛び出たヘルニアを腰椎椎間板ヘルニアと呼びます。
さらに椎間板に強い圧力がかかる生活を送っていると髄核をとり囲む繊維輪に亀裂が入ってしまい、そこからゼリー状の髄核が突出し、椎間板のすぐ横を走っている神経の束を圧迫し腰痛や足の痛み、シビレを起こす原因となります。
なぜ椎間板ヘルニアは若い世代に多く、50歳以上では発症が少ないかというと、椎間板の中にあるゼリー状の髄核は、若いころは水分をたくさん含みとても弾力性のある状態ですが、50歳以上になると髄核の水分量は極端に減り、弾力性はなくなり、ゼリー状ではなくなってきます。 若い頃は、椎間板にも弾力性があるため、年配者に比べ腰をひねる、前屈、後屈などがスムーズに可動域が広く行えますが、髄核がゼリー状であるがため、周りを覆っている繊維輪を圧迫し椎間板の飛び出る(ヘルニア)原因となってしまい神経を圧迫してしまいます。
いっぽう50歳以上になると、椎間板の弾力性がなくなることで腰をひねる、前屈、後屈の可動域は狭まってきますが、椎間板の髄核が硬くなるため、外に飛び出ることはなくなります。
イメージでいうと・・・
若いころの椎間板というのはカップ(繊維輪)に入ったゼリー(髄核)のようなもので、上からカップを押すとゼリーとカップは横に広がると思います。カップのすぐ横に神経が通っていると思えば、椎間板が神経を刺激してしまうことがイメージできると思います。
圧力のかかった状態でさらにカップに楊枝などで穴(繊維輪の亀裂)を開けたとすると中のゼリー(髄核)が外に飛び出てきて、)神経を強く刺激することになります。
一方、50歳以上だとカップゼリーではなく筍の輪切りをイメージしてください。あまり上から圧力を加えても横には広がらないことがイメージできると思います。
ヘルニアにはCT検査やMRI検査などにより椎間板の出っ張り方によって4種類に分類分けされています。
①椎間板膨隆型ヘルニア(軽度椎間板性腰痛)
背骨は生理的に前後の弯曲があり、S字弯曲と言い、腰痛は前弯しています。腰椎(腰の背骨)の前弯が崩れると腰椎の前側に圧力がかかりやすくなり、椎間板の髄核が後方に移動し、椎間板が後方に膨らんでくる。椎間板の後方には神経の束(脊髄)が通り、脊髄から枝分かれした神経の根元(神経根)を圧迫したり、刺激したりすると痛みやシビレがでてくる。
②椎間板突出型ヘルニア(中度椎間板性腰痛)
①のような椎間板の変性が進むと、椎間板の中身である髄核がさらに後方に移動し、椎間板がより後方に飛び出してきます。
③椎間板脱出型ヘルニア(重度椎間板性腰痛)
椎間板の変性がさらに悪化し、繊維輪が破れて、中身の髄核の一部が外に飛び出してくる。
④椎間板塊遊離型ヘルニア(重度椎間板性腰痛)
完全に繊維輪を突き破って、髄核やあるいは繊維輪などの椎間板組織が外にでて離れた状態になっているもの。
①②の状態であれば、治療効果はかなり期待できます。
③④の状態でも治療期間などはかかってしまいますが、治療効果は期待できます。
椎間板ヘルニアの症状
ヘルニアの起こる好発部位は、第五腰椎と第一仙椎の間、第四腰椎と第五腰椎の間にある椎間板がヘルニアを起こすため、それぞれの間から出る神経(坐骨神経)が圧迫されるため、腰部、殿部、太ももの裏、膝の裏、ふくらはぎ、足の裏、すねなどの坐骨神経の支配領域に痛みやシビレ、筋力低下、腱反射低下などの症状が診られます。
下肢の痛みまたはしびれの出る位置によりどの高さでヘルニアを起こしているのかを判断できます。
すねの内側から足の親指にかけてしびれる
→第四腰椎神経
すねの前から足の甲、足裏がしびれる
→第五腰椎神経
足の小指から外側にかけてしびれる
→第一仙椎神経
椎間板ヘルニアの診断
X線
極端に出っ張っているヘルニアは観察できるが、CTやMRIで細かい画像診断が必要。
CT、MRI画像検査
腰椎の縦、横の輪切りの図が撮れるので、どの高さでヘルニアが起きているのか、どっちの方向に出っ張っているのかなど細かな画像診断が出来る。
SLRテスト
患者を仰向けで寝かせ足をまっすぐ伸ばした状態で、痛みやシビレの出る足を曲げていく(足を上に上げていく)
その時に痛みやしびれが強くなる場合、腰部椎間板ヘルニアの疑いがある
症状と画像診断は一致しない??
今まで、X線やMRI等の画像診断を受ける方は腰から足にかけて何か症状のある方が受け、結果ヘルニアなどが見つかってきました。しかし、実験的に腰から足にかけての症状がなにもない方のMRI画像を撮ってみると、ヘルニアだと思われる軟骨の出っ張りがある人が多数診られました。
実は画像診断で判断できるヘルニアと症状が出てるヘルニアとでは決して一致しないのです。
ヘルニアが起きていてもシビレ、痛みを感じる方もいれば、まったく無症状の方もいるのです。
ではこのつらい腰痛、シビレの原因は?
これはある程度私の仮説になってしまいますが、画像診断でヘルニアが起きていても腰下肢痛の出る人、出ない人がいるということは、ヘルニアそのものが神経を圧迫して痛むのではなく、ヘルニアを持っている人は神経の近くが炎症が起こしやすく、その炎症により腰から足にかけての痛み、シビレが出るのだと思われます。
ですから、「炎症が起きやすい」と書いたのは「炎症が起きてない」人もいるということです。その人たちが画像にはヘルニアが診られても、腰下肢痛のでていない人たちだと考えられます。
結果、出っ張ったヘルニアを取り除かなくても、炎症を起こしている神経を沈静化することができれば、ヘルニアの症状である、腰から足にかけての痛み、シビレの改善が出来ます。
椎間板ヘルニアの整形外科での治療
保存療法(手術はせず、他の方法で様子を診る)と手術療法に分けられる。
保存療法
鎮痛薬(痛み止め)の処方(ロキソニン、ボルタレン等)
温熱療法
けん引療法
現在、整形外科学会でも発表されたように、多くの腰痛に効果がないと言われているが、整形外科では未だに行われているところもある。椎間板自体を引き伸ばすことはできず、周りの筋肉を引き伸ばすことで一種のマッサージ効果があるだけ
運動療法
マッケンジー体操
神経ブロック注射
痛みを起こしている神経に麻酔を注入し痛み、シビレの緩和をはかる。
(硬膜外ブロック、神経根ブロック、トリガーポイント注射などがある。)
レーザー治療(PLDD)経皮的レーザー
椎間板減圧法
- ヘルニアが飛び出し神経を圧迫
- ヘルニアによる神経の圧迫を弱めれば痛みの原因がなくなる。
- ヘルニアを起こしている椎間板の中央部にレーザーで空洞を作る
椎間板の内圧は下がるので、飛び出したヘルニアは元に戻る。 - 神経の圧迫がとれ痛みが楽になる。
手術療法
基本的にはどのヘルニアでも保存療法で様子を見ますが、尿や便が出ずらい(膀胱直腸障害)や筋力低下、激しい痛みが三カ月以上続くものは手術適応になることがある。
椎間板ヘルニアに対する当院での治療
現在、国際腰痛学会の発表によると、「椎間板ヘルニアは、9割の方が自然治癒する」という発表がでました。
ヘルニアのでっぱりは、人間が元々もっている免疫細胞であるマクロファージが取り除いてくれることが立証されました。
ですから、現在は、手術をせずに治療を進めていくことが主流になっています。
しかし、椎間板ヘルニアによる腰痛・足のしびれ・痛みは耐えがたい痛みの事が多く、自然治癒するのに数カ月かかると言われているので、それまでの痛みのコントロールが必要になります。
椎間板ヘルニア(椎間板性腰痛)は、 激しい腰痛と足のシビレが強いため、腰やお尻周りにも強い筋緊張がみられます。この筋の緊張により、筋肉は縮み、さらに椎間板にかかる圧力が増し、椎間板の突出(ヘルニア)を助長してしまいます。
土井治療院の治療により、椎間板ヘルニアの治療で期待されるのが、
①痛みにより、腰回りの筋肉が硬くなり、さらに痛みを助長してしまうので、腰回りの筋肉の緊張緩和。
②興奮している神経は、激しい痛み・しびれを起こすので、興奮している神経の沈静化。
③ヘルニアを除去してくれるマクロファージをヘルニア近くに集める。
①まずは、鍼やマッサージで強い筋緊張を取り除き椎間板への圧力を減らします。
鍼
椎間板ヘルニアの場合、腰の深部の筋肉(神経に近い筋)が硬くなっている場合があるので、体質によっては長い鍼を用いて深部の筋肉をゆるめます。
※鍼が怖い方、体質が敏感な方には、無理に長い鍼を使う治療はいたしません。
マッサージ
椎間板ヘルニアのある腰に一般的なマッサージや指圧をすると、腰を押す力で返って椎間板に負荷をかけてしまうことがあり、症状を悪化させてしまうことがあります。 当院のマッサージでは、しっかりとポイントをとらえつつも、椎間板や骨に圧力のかからない特別なマッサージ法で行っています。
※椎間板ヘルニアなどの坐骨神経痛がある方は、しっかりとした知識、技術のない治療家にマッサージや鍼治療をしてもらうと、かえって症状が悪化する場合がありますのでお気を付けください。
②椎間板の突出(ヘルニア)により圧迫された神経(ほとんどが坐骨神経)は過敏状態になり、強いシビレ、痛みを感じやすくなっているので、過敏になっている神経の沈静をはかる。
坐骨神経の走行に沿ってあらわれる圧痛(ワレ―の圧痛点)やヘルニアの治療に用いられる膀胱経の経絡に沿ったツボに鍼治療をして神経の過敏状態の沈静化をはかる。激しいシビレがおさまらない場合、鍼に電気を流して治療をするパルス療法なども経過によっては行う。
椎間板ヘルニアに対する治療は、周りの筋の緊張緩和、興奮神経沈静化でも充分症状が和らぎます。頑固な痛み、シビレの残る場合、鍼治療とマッケンジー体操を組み込んだ運動鍼をすると、治癒率はかなり上がります。
③マクロファージをヘルニアの近くに集め根本治療をはかる
上記でも説明したように、神経を圧迫しているヘルニアは免疫細胞であるマクロファージが除去してくれます。
マクロファージの本来の働きは、体に入ってきた細菌や異物を除去することです。
そのため、鍼治療の際、鍼が体の中に入ってくると、異物が入ってきたと認識され、鍼周辺にマクロファージが集まってきます。
ヘルニアの近くに鍼治療をすることにより、一層マクロファージが集まり、ヘルニアの除去を早めてくれます。
ヘルニアによる痛み・しびれを我慢し続けていると、神経そのものの変性が起き、ヘルニアが除去されても痛み・しびれを感じ続けてしまう事があります。
椎間板ヘルニアは、上手に痛みのコントロールをしながら自然治癒をより早期に促すには、当院の鍼灸マッサージ治療は大変効果です。